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江古田魔鬼音始末記

2010年06月06日 | カテゴリー: ミュージック・コラム 

36年か。世間でこの道一筋30年などとオーソリティーを取り上げたりするが、自慢するつもりはないが、実にそれよりも遙か6年も長くこの道歩いているのである。
それでは歌詞を見ないで何曲歌えるか?ということになると俄然形勢が不利になる。数曲しかない。トホホでござる。きっちりと36年を2で割った前半18年と後半18年を分けることが出来る。前半は比較的大きなステージである。ここでの勉強はほとんどゼロであったと言えよう。すでにステージに出る前に東京でリハーサルを終えて、自分の役割を果たすだけのポジションのひとりだった。幕が上がると場内は真っ暗で、その上距離が離れているので顔どころか姿も見えない。大げさに言えばお客さんが生きているか死んでいるかもうかがい知れない。おまけにスポットライトなど当たった日には逆光で何も見えない。そんな中で歌う歌はレコード通りに歌う歌。アァーなんて退屈な時間だろう。しかしその報酬は今よりは数倍大きかった。多くの人がグループを止めない理由のほとんどは、この報酬に尽きるだろう。しかしこの事を公の前で言ってしまっては身も蓋もない。であるからハーモニー、協調精神のすばらしさを説いたりする。会社と同じである。よくぞ自身も18年続けたものである。20代、30代、40代少々、貴重な時間をこの手の音楽生活で続けたものだ。

そして42歳で再出発をしたわけである。足下を見つめ直そう。もう一度やり直そう、立て直そう、今までの積み重ねた時間、スタイル、精神のすべてなげうって顧みて、再出発をライブハウスというお客さんとの距離が目の前のステージを選んだわけだ。ここでは鼻水を垂らしても、涙を流しても、無精ひげが伸びていても完全に見破られる。真剣勝負なのである。抜いたら竹光であったでは情けなくて困るのである。

初めて吉祥寺の「マンダラ2」の階段を下りていった日を良く覚えている。3日間行ったライブに集まってくれたお客さんは、ふきのとう時代のお客さんばかりであるから、まだライブ会場での自分ではない。まだまだギターも歌もふきのとう時代のスタイルだった。興奮のままライブ終了、ギターの片付けを自分ですることが何となく億劫だった。そしてまだ残っているお客さんの視線が怖かった。恥ずかしかった。
あれから18年月日が流れた。
江古田マーキーは全国で一番回数をこなしている会場だ。ホームグランドと言っても良い。年に平均3回ほどやっているので通算54回、階段を下りて上ってということになる。しかしまだまだやることが山積している。毎回挑戦のライブだ。ふきのとう時代のぬるま湯ではない。僕は本当に良いお客さんに恵まれている。人の傷みを分かる人間は良いモンだ。みんなみんなお先にどうぞ、どうぞの精神だ。そんな人たちが集まってくる夕べのひとときは幸せの夕べなのである。自然会場の空気が一体となる。居眠りするお客さんの寝息も聞こえてくるほどの静寂の中で聴き入ってくれる場内は歌い手、弾き手冥利に尽きるというモンだ。汗を一杯かく。身体が軽くなる。年に3回身体的、精神的に大きな新陳代謝をしている。昨夜も一番のライブだった。この頃、この一番を毎回更新してるような気分になる。
感動してくれる喜びは天からのプレゼント。

鳩山政権は260日ほどで解体、霧消した。何もまだ言ったことを実行せず沈没した。鳩山さん自身はおそらく40年近くも大きなステージで演じてきただろう。しかしそれが全く生かし切れなかった。つまりスポットライトにどう照らされるかだけで40年を過ごしてきたのだ。今それが完全に日のもとに露呈された。沖縄に初めて行った話を聞いたとき信じられなかった。僕でさえ年に2回も行っている。県民の揺れ動く気持ちも痛いほど分かっているつもりだ。その証拠に知事と那覇市長が違う党の人。これではうまくいくはずがない。北海道札幌も同じだ。せめて同じ考えの人が引っ張っていってくれなくては、一隻の船に違う港を目指す船長が二人いたのではいつまで経ってもどこに行くのか迷走するだけだ。ふきのとうの末路も同じだった。

「津軽鉄道各驛停車」をどうするか、とびっきり良いものに仕上げよう。11月の焦点だ。その前に「この国に生まれて60年」がある。あと4ヶ月で大台に乗る。昨夜皆が帰った後、楽屋で同じ歳のオーナーUと話した。「10月で60歳になるなんて信じられないなぁ」彼は苦笑しながら「嫌だなぁー」彼も10月生まれなのだ。全国広しと言えどもなかなかフォークソングがピッタリのお店が少ない。意外とジャズの店はある。しかしマーキーはますます練馬区江古田駅前千川通り吉野家地下で燦然といぶし銀の輝きを放っている。

みなさーん、ありがとー、あったかく軽くなったかーい!
次回9月4日土曜日は奇しくも母の命日、50代最後の「魔鬼」だ。
(山木康世)