ビタミンM=マーク・ノップラー
2010年03月05日 | カテゴリー: ミュージック・コラム
何度か聴いて良くなった楽曲と言うことをあまり聞いたことがない。
ほとんど直感的、直接的に響き届くもので、徐々に良くなったり他からの影響で良くなったりするものではない。
頭が良いとか、要領が良いとかも問題にならない。
一度聞いて響いたものは一生つきまとい、何かと人生のステージに顔を出すものだ。
イギリス人ギタリスト、シンガーソングライターにマーク・ノップラーという人がいる。
30年ほど前、深夜テレビで見かけていっぺんに好きになった人だ。
このときは「悲しきサルタン」のライブビデオだった。
あくまでもギターそのものの音を引き出すということか。
彼の弾くギターは実に歌とうまく絡み合って画面に釘付けとなった。
彼の弾くテレキャスターは、ノーマルでエフェクターをかけていないようだ。
彼はピックを使わない。サムピック(親指にはめて使うピック)でアルペジオ(分散和音)のように縦横無尽に弾きまくる。
案外サムピックで弾くギタリストは多いようだ。
そして彼の歌声だが実に良いテノールをしている。少し鼻にかかった乾いた歌声は、フォークソングにピッタリなのだ。
話すように、ささやくように無理をしない自然体歌唱法が良い。
作り過ぎの歌唱法の歌手には辟易する。ストレートが良い。まっすぐに突き抜けて飛び込んでくるボーカルが性に合う。
今ステージで見て聴いてみたいギタリストの一人がマーク・ノップラーだ。
派手さはないが世界で例を見ない個性派名手である。
一度聴いたら忘れられない音、歌声、ギター音、奏法、どれをとっても僕には極上の音楽だ。
心を軽くして、少年のような気持ちに戻してくれる性に合う音楽は僕の人生になくてはならないビタミンM(ミュージックのM)である。
グリコのおまけのように付け加えるが、彼の弾くドブロも外連味(けれんみ)がなく大好きだ。
※外連味とは受けねらいでするいやらしさやはったり。
(山木康世)