となりの電話 山木康世 オフィシャルサイト

小林陰陽後始末記

2010年04月07日 | カテゴリー: ミュージック・コラム 

「明日はどちらですか?」
「初めての小林市」
「あーそれなら陰陽石を見に行かれたらいい。立派なご神体を拝めますよ」
宮崎の夜、打ち上げの席で当時中学生だったという男性が小声で教えてくれた。
向かいの席には福岡から出張帰りで急遽駆けつけた宮崎の温家宝さんが座ってニコニコしている。
「後一人まだ予約の人が来ていないので5分押します」と言われて開演前、出番を待っていた。用事を思いつき外に出てコンビニによって戻ってくるとタクシーから急いで降りてくる男性を見かけた。信号の筋で降りたので、もしやと思い見ている。男性はこちらを見るなりニコニコ顔で頭を下げて小走りで会場の方へ、そして会場の階段へ消えていった。あの人が最後の人、さぁ始めるか。まさか福岡帰りのジェントルマンだったとは知らなかった。
「誰かお客さんでピックをお持ちの方いらっしゃいませんか?もしもおられましたら貸して下さい」
『弁慶と義経』を前にお願いをすると、先ほどの温さんがニコニコ顔で「ハイどうぞ」と白いピックを財布の中から取りだして貸してくれた。それにしても財布にピックとはかなりのギター熱。少々硬いピックだったが、渾身の『弁義』が演奏できた。

さて打ち上げの席でであるが「宮崎で多い姓は何ですかね?」
「私は日高と言うんですが、私の周りはほとんど日高、親戚や兄弟でもないですが何せ日高ばかりです」
知らなかった、日高姓が宮崎に多いとは意外だった。僕は昔、確か宮崎出身だったスタッフの黒木氏を思い出し「黒木さんも多いんでないですか?」
「はいっ!僕が黒木です!」すかさず隣に座っていた前述の陰陽石さんが即答した。
その絶妙なタイミングが場の空気にガッチリはまってその場に居合わせた全員、大爆笑。
これもライブなのだ。生の人間が居合わさせると何が起きるか分からない。何が待っているか分からない。それだからこそ人と会っているとおもしろいのだ。まぁたまには一人孤独を愛してもいるが。

そんなわけでご立派な天を指す陰陽石を拝んでの小林初見参は大盛り上がりだった。
ご神体が僕の身体に精強盛況風を吹き入れてくれた。
「陰陽」を調べると
■天地の間にあって、万物を発生させる働きがあるという、陰と陽の気。相対する性質の、天地・日月・寒暖・男女・表裏・春秋・生死・上下・君臣などのこと。「漢字源」より。
■古代中国に成立した基本的な発想法。陰は山の日かげ,陽は山の日なたを表し,気象現象としての暗と明,寒と熱の対立概念を生み,戦国末までに万物生成原理となり,易の解釈学の用語となって,自然現象から人事を説明する思想となった。「マイペディア」より。
■中国の易学でいう、相反する性質をもつ陰・陽2種の気。万物の化成はこの二気の消長によるとする。日・春・南・昼・男は陽、月・秋・北・夜・女は陰とする類。「広辞苑」より。

かくのごとく陰陽とは奥が深いのである。宇宙の根本は男女にあり。あくまでも人類の男女が考え築き上げた宇宙概念、宇宙モデルなのである。誰も実態を見たことも、見ることもできない概念なのである。宇宙の果てを考えると眠れなかった小学6年の夜を思い出す。物の本には風船のように広がっていると宇宙モデルを説明していた。故に果てはあるのだが膨張しているので、いつまでも届かない。故に無限なのである。
分かったような分からないような宇宙という大パノラマ世界に我々は存在して、さらに時間という一見同じような、しかし個々人で使い方によっては天地ほどの違いが出るやっかいな概念の中に生きている。

フラワーの夜に本物の花は咲かなかったが、音楽と世間話に大いに花が咲いた。
恐るべし陰陽パワー。睾○の「睾」の字をよく見ると血のような字を幸せが支えていた。
お忙しい中駆けつけてくださった大勢の陰陽さまさまありがとう、ありがとうー。

(山木康世)