ギター四方山話糸巻乃巻
2010年04月14日 | カテゴリー: ミュージック・コラム
今日は糸巻き(ペグ)のお話。
ギターに限らず弦楽器の弦をいかにして張るか、先人たちは考えたことだろう。
ウクレレなどは、直接木の棒で巻き上げる構造で弦を張る。クラシックギターでは歯車を採用して、直角に回るように木の棒を配置してあり、それで巻き上げる。ウクレレよりもはるかに強い張力(テンション)がかかるのでそれに耐えうるように歯車で巻き上げる。歯車はむき出しである。
初期の頃のマーチンもクラシックギタースタイルの糸巻きである。これはヘッドに2列の溝を作ってそこに6本の木の棒を渡して、そこに巻き付け巻き上げる。かなりややこしく弦を張り替えるのに手間がかかる。
その後2列の溝はなくなり、丸い6個の穴を開けてそこに木の棒ではなく金属の棒を通し、さらに棒に小さな穴を開けそこに弦の先を入れて巻き上げる。金属の種類も金と銀とプラスティックが存在する。
メーカーとしてはグローバー、シャーラー、GOTHOなどがある。
ちなみにギブソンB-25の純正品はシャーラーのクルーソータイプのもので連座式である。ペグが3個一枚の金属に集まって連なっている。これを単品型のものに付け替えても若干、音が変わってしまう。
僕のネックは傷物であちこちねじ穴があったり、棒を通す穴は大きく開けすぎたため、逆に細くした経緯がある。自分で交換できるのだが、ネックの穴の径まで変更してはだめである。
歯車の発明は人類の可能性を一歩進めた画期的な発明である。ネジも大いなる発明である。この世にネジがなかったらどれほど不便だったろう。
ペグが重すぎるとバランスの悪いギターになってしまう。立って演奏をしたときに際だってしまう。理想はネックに糸巻きを貼り付け一体化できたら一番なのであろうがそうはいかない。そこで小さなネジで留めることを考えた人がいる。偉い人だ。
ギター一つとっても、長い道のりの歴史があって先人たちの創意と工夫がたくさん取り入れられている。
ペグはギターの調音、共鳴を決める大事な陰の立役者、縁の下の力持ちというところ。GOTHOは日本製であるが、ただいま、すこぶる評判の良い世界のペグメーカーである。ちなみにテリーズ・テリーはGOTHOペグである。
昭和18年製マーチンD-18のペグはネックに穴を開けたクラシックタイプのペグである。シンプルなペグは軽くて存在を忘れさせる。ペグを含めたボディーの軽いギターは持っていて楽しくなる。足取りが軽くなると言うのは事実である。
ペグ交換を自分でするという演奏者は少ないかもしれない。死ぬまで自身のギターにねじ穴を開けたりしないだろう。しかしおもしろいよ、自分好みのペグに交換するまで愛着を持ってきたらしめたものである。
体の一部のように感じてきたらもう死ぬまで一緒だ。棺桶に一緒に入ってあの世に行くというのも乙なものだ。それにしてもギター1本でこの世という川の流れを渡って行くのだから恐るべしギターである。
(山木康世)