となりの電話 山木康世 オフィシャルサイト

ギター四方山話移調乃巻

2010年04月16日 | カテゴリー: ミュージック・コラム 

弦の音の高さをまとめて移調するとき使う小物に「カポタスト」というギター小物がある。つまりキーをこの小物一発で変換できるので大変便利である。
ゴム製、金属製とあり値段もいろいろである。割り箸とゴムで作ることも可能である。
ディランがエレキギターに付けて弾いていた写真を見た。エレキギター奏者に言わせれば邪道であろう。ジェームス・テイラーも弾いていた。何もアコースティックギターだけのものではなく、ギター全般に使用して良いのではないかと思うのだが、もしかしたらエレキ奏者のプライドが許さないのかもしれない。
僕が初心者の頃、あこがれたカポタストはドノバンのレコードジャケットを観て知った金属製の巻き上げて締め付けるタイプのものだった。指板に当たる部分は厚手の竹輪のようなビニールで被われている。この形のカポタストを求めて札幌の楽器屋を物色したものである。しかしこのカポの弱点は巻き上げるネジが馬鹿になることと、ネックに当たり支えるフェルトが崩れてくることにあった。
YAMAHA製のカポタスト使ったが、この欠点はネジがキーキー音を出すことだった。これはなぜか知らないが使っている内に必ず鳴き出すので使うのを止めた。
ゴム製のものは強力な平ゴムに数個の穴を穿って、ちょうど人のベルトのような考えからできた代物だ。この欠点はゴムが中で切れて緩んでくることだった。しかし比較的安価だったのでずいぶんと買い換えたモンだ。
その後あまりパッとした発想のカポタストは出なかったが、10年ほど前にシャブ(名前がいかがわしい)という会社から出た自動にセットできるものだった。これは画期的な製品で高価だったがカポタストの概念を変えた製品である。このシャブも数度改良されて今は本当に使いやすいものになっている。
今使っているものはダンロップ会社の真鍮製のものだ。これは自動ではないのでいちいち確かめて締め上げなければいけないのだが、これが確実なのである。シャブも非常に使いやすかったが、何度かよくセットされていないまま弾き出し弦がビビッていたことがあってやり直さなければならないことがあった。便利で素早かったが、一度へまをすると始めからやり直さなければいけない。ステージの上でのやり直しは考え物だ。
ちなみに学生時代フォークソングクラブの出した学園祭の出店の名前が「カポタスト」だった。カポタストに泊まり込んでギターをかき鳴らした夜を思い出す。

華歩蛇巣兎=兎の巣に華麗に歩み寄る蛇
なんて読むと思う?こんな暴走族の名前は強くなくて好かれないだろう。

(山木康世)