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北海道中標津TicoTico森の木陰でドンジャラホイ

2025年08月26日 | カテゴリー: 山木康世 

幾つだったのだろう。確か「ふきのとう北海道ツアー」と称して、コンサートツアーを行うことができるようになった頃の話だから、それほど初期の頃の話ではないはずだ。
中標津のと或る深夜の旅館の話である。
打ち上げを終えて2次会も引けて宿泊予定の旅館に戻ってきた。もう旅館の方もフロントにカギを置いて引き上げたようで、薄暗い玄関でカギを受け取ろうとフトフロントを見ると、だれか知らない人のハガキが置かれている。明日の朝一番にでも出そうという書き手の意図が分かるような置き方で置かれている。読むとはなしに読んでしまった。「・・・東京に戻ったら結婚してください。愛しています中標津より関取M」
売り出し中のM関のハガキだった。当時大相撲の巡業中と同じコースを少し回っていたのであるが、あの中の一人の関取のプロポーズの声を読んでしまったという構図だったわけである。あの大きな図体から書かれた小さなかわいらしい字で書かれた愛の告白。なんとも微笑ましく部屋に戻って良いもの見たなぁと感じで寝入ってしまったことを思い出した。それから僕たちを乗せたマイクロバスは長句稚内まで走った。
今日は釧路から2時間ほどの行程を走ってきた。
TicoTicoを初めて伺ったとき、マスターが亡くなられて1年ほど経っていた。森の中にポツンと建っていた木造のライブハウスは、基本ジャズのお店であった。映画のワンシーンにでも出てきておかしくないライブハウス訪問も数えること4回目くらいであろうか。周りの緑に圧倒されるような自然豊かな中のTicoTicoにいると時間を忘れる。日頃の喧騒さを忘れる。僕の歌のテーマがよく反映されて自然体で過ごす2時間は何とも得難い2時間である。
オープニングで奏でてくれた釧路のウクレレクラブによる「風来坊」は弾みを付けてくれる。釧路HOBOのマスターのPA手伝いも大変ありがたく盛況さにメンバーともども一役買ってくれた。TicoTicoの今は亡きマスターも片隅で喜んで手をたたいているような気もした。そう言えば最初に伺ったとき本番中椅子に座っている僕の背中を軽くさすり風のように過ぎていった空気を感じた。マスターかもしれない。マスターに違いない。歓迎してくれたのに違いない。
森の中のTicoTicoで北海道ツアーも終わった。それほど暑くなかった八月終わりの2025年は思いで多き刈り入れの幕開けとなり、心置きなく東京へ戻ることができてやれやれ、皆さんへ感謝いたします。どうぞお達者でまたお会いしましょう。
森の木陰でドンジャラホイホイ。

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