となりの電話 山木康世 オフィシャルサイト

なぬー!?とほほ

2010年02月07日 | カテゴリー: ミュージック・コラム 


 八戸は初めてのライブ。身も心もギターも新たにがんばんべぇー。
「3つ目の信号を右に曲がりましたら市役所が見えてきます。その信号を左にまっすぐ行きましたら右手に楽器屋があります」
ランチの食堂の若い従業員は身振り手振りで丁寧に教えてくれた。
足下が危なっかしい冬道を楽器屋さんに弦を買いに急いだ。歩くこと10分あった、あった。店内は若いジャージ姿の女学生4人が盛んにエレキギターを見ている。

 いつも使用している『ダダリオライト』は東京よりも5割り増しという高値だった。一つを手に店内を一巡り。
 おやおや、こんなところにダンボールにごっそりと安価な弦がセールで出ているじゃあーりませんか。その中に我が愛器、ギブソン製の弦がたくさん売っているじゃあーりませんか。ラベルには我が愛しのヘッドがデザインされている。ライトを買わなければいけない。間違ってメディアムを買ったら、テンションがきつくてライブがきつくなる。間違えのないように。手にした先ほどの弦をしっかり戻してカウンターへ。心は躍っていた。

 ホテルの部屋で愛器の弦を4本外してギブソン弦の箱を開けた。なんだか胸騒ぎがした。おや?チラッと見えた弦の色はシルバーだ。なぬー!?とほほ。急いでいたとはいえ一本やられたべぇ-。本当は銅の色でなくてはならないっしょ。箱のラベルを読み直す。エレキギターと書かれてるんではないかい。
 張っては見たがテンションが低くてやはりだめさ。まったくの安物買いの銭失い癖は見事牙をむいて八戸で襲いかかってきたさ。36年間で何度弦を張り替えたことだろうね。

 楽器屋に戻ることもできず取り外した弦を元に戻した。調弦して弾いてみると、まだ鳴るんでないかい。大丈夫なんでないかい。八戸ライブでいつになく愛器は心を反映して幸せの音をくれた。老兵は去るのみ、なんて言葉は必要ない。

 老兵の持っている経験にもっと耳を傾けてみよう。まだまだ捨てたもんじゃない。
ホテルのゴミ箱に捨てられた新品同様のギブソン弦に昨日の八戸が蘇ってきた。

(山木康世)