となりの電話 山木康世 オフィシャルサイト

棒を振る男がパンツ一枚見たさで人生を棒に振ったお話

2010年02月26日 | カテゴリー: ミュージック・コラム 

機動隊隊長が女性の下着をのぞきたくて、もったいない人生を棒に振る。
僕と同じ世代の警察官が退職を目前に何という失態。

隊長は朝から退職手続きのために勤務先の帯広から札幌に帰省していた。
この日朝から酒を飲んでパチンコをして地下鉄へ。エスカレータに乗ってフト見上げると短いスカートを履いた女性が目の前に。田舎では寒いのでこんなに短いスカートを履いた女性は滅多にお目にかかれない。一つ記念に一枚残しとっかー。とほんの些細な出来心が取り返しのつかない事件を引き起こしてしまった。

彼はオーバーのポケットから携帯を取り出すと撮影モードに気づかれないようにする。そして女性の一段下に陣取る。女性はまったく無防備で先を急いでいる感じだ。そして密かに携帯を自分の前に差し出した。シャッターを押すと意外に大きなシャッター音がした、と同時に突然女性がスカートを押さえて彼を見ながら悲鳴を上げた。

「キャー、誰かー助けて!」
彼は本来、人を助ける職業のはずなのに気が動転してしまい逃げ出してしまった。これでは自らの犯罪を認めて、俺がやったと言ったも同然だ。近くにいた男が一人駆けつけて彼を捕まえた。彼は抵抗しなかった。酒も入っていたので、気も大きくなっていたのか事の重大さをそれほど感じていなかった。

時間が経ち酒が徐々に引いて来るにつれ彼は茫然自失、晴れの退職も、勤め上げた栄光の30数年も一気に煙のごとく消えてしまった。彼が築き上げた自身の栄光、プライド、家族、親族への信頼、人間性が一気に雨散霧消。彼の胸中、脳裏には深い先が全く見ない濃霧が立ちこめて真っ暗闇になった。本来、雨散霧消は悩み事や心配事に使うのであろう。このような場合には不自然であろうが何となく使いたくなった。

パンツ一枚見たさに消えてしまった彼の将来。彼の実直なる過去。子供たちや孫たちが彼に寄せていた優しいパパさん、じいちゃん像。
こんな悲劇がいつ何時待っているとは分からない。くれぐれも人生行路、落とし穴に気をつけて酒は日が落ちてから。
そしてなべて男の根は助平である。女性の皆さん、スカートの丈はほどほどの長さにしてくださーい。

昨日、羽田に立ちこめて大混乱を引き起こした濃霧は時間が経って消えたけど、彼に立ちこめた濃霧は死ぬまで、お墓に入っても消え去ることはない。
彼はいつも厳しく部下にあーだこーだと棒を振っていたが、今度だけは見ず知らずの他人のパンツ一枚で将来、過去を棒に振ってしまった。

(山木康世)